その後は、カフェでランチ。同じものを身につけていると思うだけで、嬉しいような恥ずかしいような気持ちになる。それは、ユキ君も同じだったらしく。
「やっぱ、照れるな」
「じゃあ、外してもいいよ」
と言うと、クイッと軽くおでこを指で押された。
「ホントむかつくよな」
「そう?」
むかつくって言いながらも顔は、笑っている。
「今の内に、にくそい口きいてろ。どうせすぐ、ごめんなさいって泣き入れんだからな」
「すぐって?」
「ずっとお預け食らってんだよ。昨夜なんて、ミニブタが無防備に隣で寝てんのに食えないし、我慢も限界」
それは、私のせいじゃないもん。ユキ君が、勝手に家に連れて行くから。と思ったけど、うっかり口にしたら、後が怖い。機嫌損ねてお仕置きなんてされたら、大好きなユキ君の体に触らせてもらえなくなる。
「ミニブタって私? なんで、ミニブタ」
「イビキが煩かったから」
イ、イビキ。本当に?
「ちっこい体してんのに、イビキは親父並」
「うっ、お酒飲んだからかな」
「冗談だって。可愛い寝息は、聞こえてたけどな。でも我慢の限界は本当。早く食いたくて仕方ねぇ」
「もうっ」
ガタンと椅子を下げる音と共に、ユキ君が伝票を手に立ち上がる。
「出よう」
空いた方の手が差し出され、自分の手を重ねた。
この時、不思議な感覚が湧きあがった。
なんだろう、この感じ。
「舞?」
「ううん、なんでもない。行こう」