一人で店に戻ろうとするユキ君のシャツを引っ張って引き留める。
「待ってよ、ユキ君」
「俺からプレゼントされるのそんなに嫌か?」
「そうじゃないよ。二人で着けるなら、私もお金払いたいだけ。そりゃ、ユキ君みたいに値段気にせず買えたらいいけど、私は、そんなにお金出せないし」
「だから俺が買うって言ってんの。もういいから、ここにいて」
背を向け、店内へ入ろうとする。
「やだっ。だったら私、着けない」
私の言葉に足を止め振り返ったユキ君は、難題をつきつけられたみたいな顔で、頬をひくひくさせる。
「マジで言ってんの?」
本気だよと訴えるような目でコクリと頷くと「はぁ」とさっきより大きなため息をついて、しゃがみこんだ。
髪をくしゃり。
「勘弁してよ、舞ちゃん」
私もしゃがみ、ユキ君の顔をのぞき込む。
「ねぇ、ユキ君。お互い恋人にプレゼントしてもらった指輪はめる方が、良くない? だからユキ君は、私にプレゼントして。私は、ユキ君にプレゼントするから」
「舞からのプレゼント?」
「そうだよ。二人にとって大切な物だから、私もお金出したい。ね、お願い」
どうやら納得してくれたようだ。立ち上がり「予算は?」と聞かれた。本音は、片手が希望ではあるが、この店でプラチナは、まず無理と判断。なので、両手を広げて見せた。彼は、「了解」と笑って私の肩を抱いて店内へ。店員さんに予算を告げると本当に何のへんてつもないプラチナリングを見せてくれた。
でも、なんとなくしっくりきて、ユキ君の顔を見て「これがいい」っていうと彼も「そうだな」と笑って答えてくれた。
お店を出る時、私たちの左手薬指には、リングがキラリ光っていた。