恋の時間ですよ 第11章 嫉妬

小説
Pocket

 第10章最終頁へ戻る

経理にとって、月末月初の長期なお休みはあまり嬉しくない。きついスケジュール、ひぃひぃ言いながら業務をこなす。
そして明日は仕事納め、定時で会社を出なくてはならない。
そんな訳で、うちのチームの田口さんと二人、残業中。

「もう、終わりそう?」

「はい、あと少しで終わります」

抽出したデータの必要な部分だけを取り込み、加工。その後は、それを見ながら振替伝票をシステムで入力していく。私の隣で、田口さんは明日振り込みする社員精算のチェックしている。

「こっちも、もう終わるよ。ねえ、お腹空かない?」

「ポッキーありますよ。食べます?」

引き出しに入れてある常備菓子の中からいちごポッキーの小袋を取り出し、田口さんに差し出した。
ポリポリ、ポッキーを食べながら。

「こんなんじゃ、足しにもならないなぁ」

「そうですね、余計にお腹空くって言うか・・・」

「ねえ、なんか食べに行こうよ」

珍しい、田口さんから食事誘われるの初めてだ。よっぽどお腹すいてるんだ。
今日は残業で店の片付け出来ないとお母ちゃんに言ってあるし。

「いいですよ」

「もつ鍋の美味しい店みつけたの。トマトクリーム味」

「もつ鍋でトマトクリーム?」

眉間にシワを寄せて聞く私に向かって田口さんが掌をパタパタ。

「それが美味しいんだって。騙されたと思って、食べてみてよ」

「何だ、飯の相談か?」

あ、もう一人、フロアにいたの忘れてた。

「土方さんも、どうですか?」

土方さんは建設新聞を折りたたみ。

「トマトクリームのもつ鍋なんて、美味いのか?」

土方部長も私と同じような疑いの目を田口さんに向ける。

「食べたら分かりますって」

田口さん、どうしてもそれを食べさせたいらしい。本当に美味しいのかな?

「よし。じゃあ、行ってみるか」

「部長の奢りで?」

「そんな時だけ部長か」

「はい」

「しょうがないな。奢ってやるから、早く片付けろ」

「やったあ。ご馳走様です」

田口さんは私の顔見て、小さくピース。
その後は、大急ぎでノートパソコンをシャットダウン、鍵の掛かる引き出しへ。それからゴミを捨て、コートを手にする。

「部長、行きますよーっ」

「ああ」

小説更新、諸々のお知らせはtwitterで

PVアクセスランキング にほんブログ村