恋の時間ですよ 第11章 嫉妬

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田口さんが会社を出る前に電話で席の予約とタクシーを呼んでくれた。
タクシーで十五分、大通りから一本中筋入った所に並ぶ店、その一軒にもつ鍋屋「大ちゃん」の赤い暖簾が下がっていて。

「何だ、ここか」

「ご存じですか?」

田口さんが尋ねると、土方さんは三軒隣の鮨屋を顎で指す。

「いや、向こうの鮨屋に何度か来た事があってな」

「回ってないお鮨屋さん?いいなぁ」

「今度、連れて行ってやるよ」

私と田口さんは、やったねと互いの手をパチンと合わせた。
暖簾を潜り、ガラッと引き戸を開けるとほぼ満席、賑わっている。それにもつ鍋のいい匂い、それだけでビールが飲みたくなる。

「らっしゃい」

気持ち良いほどの活気だ。

「さっき電話した田口です」

「どうぞ。もう、鍋も準備してますよ」

テーブルに用意されたもつ鍋。スライストマトがぐるりと脇をかため、水菜が上からこんもり盛られている。
もつ鍋は食べたことあるけど、トマトクリームは初めて。どんな味なんだろう、期待感いっぱいで席へ着く。
とりあえず生中と言う部長に、私も田口さんも手を挙げた。

「生、三つですね」

スタッフがおしぼりを配りながら、鍋の説明。

「弱火にしていますが、焦げやすいので底の方を時々混ぜて下さい」

このてんこもりの鍋を混ぜろと?

「しめは、パスタかリゾットがお勧めです」

「へえ」

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