「じゃあ、これ」と簡単に言うユキ君の手を掴む。
「もうちょっとシンプルなものがいいかも。ダイヤとかいらないし」
「そうだな、俺も着けるし」
「それと、あの……。値段、もう少し下げて?」
私の言葉でなにやら察知したらしく。
「は? お前、まさか、指輪まで割り勘とか言い出すんじゃねぇだろな」
ちょっぴりお怒りモードの口調。でも、ここで怯むわけにはいかない。
「だって、二人の物だよね?」
当然でしょうと言うと「はぁ」と大きなため息が漏れる。
「あの、お客様? どうされますか」
私たちの顔を交互に見る店員さんは、少し困った様子。
ユキ君が小さくため息をつく。
「ごめん、ちょっと出直してきていい?」
そう言って、ユキ君は、私の腕を掴み、店の外へ連れ出した。
「舞、ここにいて」
お散歩ついでに立ち寄ったスーパーの前で、ご主人が、ワンコに待ってろと命令しているような感じで地面を指差す。
「えっ」
彼の言動に目を丸くさせていると。
「俺一人で買ってくるから」
「な、なんで」