ウサギとヒナ 第二話 繋がる糸

小説
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 土曜日、十年前、約束した場所へ向かった。

 ガラス張りの天井から光が差し込む吹き抜けの空間、なんばガレリアは、駅やショッピングモールへ行くのも便利で、多くの人が待ち合わせの場所として利用している。

 どうしてわざわざ、ここを指定したのかな。もしかして私に仕返しするため? 
 待ちぼうけ食らわせようと考えているとか。まさか、屋号長だよ、いくらなんでもそんな大人気ないことは、しないよね。
 でも、もし来なかったら……。ちょっぴり不安を胸に階段をおりる。

 一階の総合インフォメーションが見え、周囲をきょろきょろ。
 柱にもたれて立つウサギさんの姿を見つけ、なぜか階段を下りる足が自然と速くなっていた。

「おはようございます」
「おはよう。今日は、ちゃんと現れたな」
「嫌味、ですか」
「いや、正直な気持ち。すっぽかされないか来るまで不安だったから」
「写真で脅しといて、よく言いますよ」

 確かに、とウサギさんがふっと零すように笑う。

「とりあえず、珈琲でも飲もうか」

☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡

 

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