「他人事じゃないわよね、尾上さん」
三島さんが、にっこり笑って言う。
「な、なんでですか」
「だってユキ君、モテるもん」
「そうそう、きっと向こうでも事務員に狙われているわよ」
「だ、大丈夫ですよ。毎週、日曜日に合ってるし……。泊ってるし」
大丈夫と言いながら、だんだん声のトーンが下がっていく。
「週末は恋人と、平日は女連れ込んでよろしくやってるやつなんて、世の中いっっっぱいいるからね」
「男はチャンスがあれば、浮気をする生きものだから、不意打ちで、たまに様子見に行った方が良いよ」
と先輩たちに力説され、今日すぐにでも見に行けとまで言われた。
ユキ君に限って浮気は無い、信じている。なのに、確かめずにはいられない自分がいて。
店の片づけを大急ぎで済ませ、私は今、彼のマンションへ向かう、最終のバスに揺られている。