握られていた手がやっと解放、胸筋の触り心地の良さに頬が緩む。
「でも、相変わらずどこへ行ってもモテるんだね」
「最近は、おっさん連中からもモテて、困る。夜遅くまで解放してくれなくて、きついんだよ」
「モテる人は大変だね。離れてると何かと心配だわ」
「心配なら、毎日来る?」
冗談っぽく笑って言っているが。
「店の片付けしてから毎日ここへ来るの? それはちょっと無理」
がっかりした顔を見れば、ユキ君が、どうしたいか分かる。
私も本当は、どうしたいか分かっている。
ごめん、お母ちゃん。
私、ユキ君を選ぶよ。
「まずは、お母ちゃんとお兄ちゃん説得しないとね」
「えっ」
意味を理解したのか、彼の表情がみるみるうちに明るくなっていく。
「お……俺も、一緒に行くからっ」
痛いほど抱きしめられて、胸の鼓動を聞きながらユキ君の匂いを吸いこんだ。
一緒に暮らしたら、毎日この筋肉を好き放題触れるんだ。
だめだ、考えただけで嬉しくて、にやにやが止まらない。