ユキ君は昼休みの食堂にも現れなかった。ま、こんな日もあるよね。彼だって仕事で忙しいだろうし。いやいや、違うでしょう。現れなくて良かったと喜びなさいよ。もしかしたら明日はまた目の前に現れて、私を振り回すかもしれないんだし。
でもユキ君はその次の日も、その次の日も現れなかった。
もう今日は金曜日。
「今日も現れないみたいよ」
「ふられたのかしら?」
「ユキ君、気まぐれだから」
小ばかにしてせせら笑う声が背中から聞こえる。嫌な感じ。
「大丈夫?」
「気にすることないよ。無視、無視」
気持ちが顔に出ていたのか、気遣う言葉を林さん達から掛けられてしまった。
「別に。気にしていませんから」
「でも、ほんとユキ君、どうしちゃったのかな。見かけないよね」
うどんがつるりと箸から滑り落ち、グレーのブラウスにカレーうどんの汁が跳ね。
「あっ」
「早く洗った方がいいわよ」
トイレへ駆け込んだ。
ううっ、ついてない。今日は歓迎会だからと、買ったばかりのブラウスを着てきたのに。
「落ちるかな」
汚れを移そうとティッシュを濡らし、ハンカチとで生地を挟むようにつまむ。幾分落ちた気はする。ジャケットを羽織れば分からないよね。でも、気分はブルー。
歓迎会が終わったら迎えに来ると言っていた。本当に来るつもりなのか聞いてみる?ふと思い立ちスマホを手にする。LINEのアプリをタップ、ユキ君の名前を見て指が止まった。
「彼氏でもないのに・・・・・。二次会だって行こうがどうしようが私の勝手じゃない」
そうだよ、ユキ君なんて関係ない。