「浮気されたかも」
「嘘、本当に?」
「彼、一人暮らしなんだけど、仕事忙しくって、しばらく会って無かったの。久々に行ったら部屋の感じがおかしいのよ」
背後から聞こえてきた話を耳がキャッチ。
見ると向かいに座る三島さんたちも箸が止まっている。私たちの興味はすっかり後ろの話に向いていて。
「どうおかしいのよ」
「私のじゃない、化粧水とかコットンとか置いてあったの」
ええっ、それはヤバいよ。思わず、カレースプーンを握る手に力がこもる。
「私の勘違いだとか、化粧品は、自分のだとか言うのよ。信じられないでしょう」
彼氏……バレバレの嘘をつくなよ。
「絶対、嘘だね」
うん、うん。私も先輩もこくこく頷いた。
「使ってないゴムの箱が開いてたの」
ゴ、ゴム。生々しい話だ。ゴクリ。
「うわっ、マジで? で、どうすんの?」
「どうしよう。でもさ、本当に好きなんだよ。別れたくない」
「そろそろ仕事戻らないと。帰りにまた聞いてあげるから」
私と先輩たちは互いの顔を無言のまま見合わせた。暫し沈黙のあと、林さんがふーっと息を吐き、ボソッと小声で。
「浮気、間違いないわね……」
「化粧品ある段階で、女はその部屋に泊まっているの決定だよね。しかも何度も泊まってる臭いがしたわ」
に、臭い?