ここに愛がある 第一章 チャンスの神様

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その日私は仕事がなく、夕飯の食材を買うため軽自動車に乗り込み、スーパーへ向かっていた。
どうもハンドルが取られているような気がする。気になって車を路肩へ寄せた。
降りて確認すると後ろのタイヤにネジが刺さっている。
側面なんて最悪だ。こんなところやられたらタイヤを買い替えるしかない。

「あちゃー、最悪だ」

痛い出費に泣きたくなったが、とりあえず、スペアに交換しなければ。ため息ついて立ち上がり、ハッチバックを開けてスペアタイヤとジャッキ、工具を取り出そうとすると。

「パンク? 大丈夫ですか?」

声を掛けてくるなんて、親切な人だな。でも手助けは不要なのよね、自分で出来るから。なんて思いつつ顔を上げた途端。

キッシューン。
辺りを見回したが、トラックもバスも走っていない。
でも、確かに聞こえた。排気ブレーキの音が。

それにしても……この人、めちゃくちゃ綺麗な顔しているな。
モデルかな? 俳優かも?
美形で、背が高く、スタイルも良いとか、完璧過ぎでしょう。爽やかな笑顔が眩しいな。
見惚れていると、スーツの上着が目の前に。

「ゴメンね、ちょっと持ってくれる?」

物腰の柔らかい口調、落ち着いた声。どうしてだか、ドキドキして、落ち着かない。
軍手をはめて、スペアタイヤを取り出す姿も、またカッコ良くて、キラキラして見える。

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