ハッキリ、きっぱり言ったのに、私の手に自分の手を重ね。
「ヒナは東京に来るよ。俺がそうさせるから」
テーブルに肘をついて、手の甲に顔を乗せて、私を見つめるウサギさん。その瞳から視線を外すことが出来ない。
「俺のこと嫌い」
「えっ」
「じゃないよね。嫌なら、飯もホテルも、今日だって来ないだろ」
「それは……」
そうかもしれないけど。
「どうして私なんですか。宇佐見さん、モテるでしょう? 他にいくらでも」
ウサギさんは少し間を置いて「そうだな」と。モテることは否定しないんだ。
「抱き心地が良かったんだよな」
ドキッ、とした。
抱き心地?
それって……。
ウサギさんと私が抱き合って眠る姿が、ぼわんと頭に浮かび、慌てて手を振ってかき消した。
「自分にピッタリの枕を見つけた時の喜びって分かる?」
「枕?」
私は何度も目を瞬かせる。
「枕は大事だぞ。睡眠が変わるんだからな」
まさかの枕扱い?
「他の枕を探してください。遠距離恋愛なんて私には」
「まだ何もしてないうちから出来ないって決めつけるのはよくないぞ」
「無理って分かっているのに始めるのもよくないですよ」
「遠距離が嫌なら東京にくれば?」
「なんでそうなるんですか。行きませんから」
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