「そのうち、手は出すけどね。でも、今日はやらない。そういう訳だから、付き合おうか」
「はい?」
聞き間違い?
「俺と付き合おう」
一瞬、固まってしまった。
「なんの冗談ですか。からかってます?」
「本気だけど?」
真顔のウサギさんに、私は手を振って拒む。
「宇佐見さん東京に住んでいるんですよ。遠距離ですよ。無理ですよ」
どう考えても無理だ。続くはずがない。
「週末通うよ? 月一は大阪出張だし、平日は電話とビデオ通話。まあ、それでも寂しくなったら、ヒナが東京異動願い出すってことで」
「なんで私が異動願い出さなきゃいけないんですか」
「だって俺、AUの責任者だよ。異動出来ないでしょ。貿易は東京にもチームがあるし」
なにそれ。ちょっとカチンときたんですけど。
そりゃあ、そっちは屋号長だし、管理職だし、重要ポストにいるのは分かるけど。
「私、東京なんて絶対行きませんからっ」