ウサギとヒナ 第二話 繋がる糸

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 カフェを出たあとは、ショッピングモールや百貨店の婦人服売り場をぶらぶら。
 ウサギさんにとっては市場視察といったところか。すごく真剣な顔して、売られている服や客の様子を伺っている。

「もうすっかりAW(秋冬)ものですね」
「ああ、しかし今年は暖冬って話だから、重量のあるものは売れ行きが悪いだろうな」

 最後にAUの店舗をのぞいた。店長がペコペコ、頭を下げている。さすが屋号長、顔は知られているらしい。
 顎に手を置いて店内をぐるりと見渡すその隣で、何の気なしにラックへ掛けられた製品に手を滑らせる。

「自社のショップって通り過ぎちゃうんですよね」
「プロパー(正規価格)で買うの、もったいないもんな。社員なら展示会で買えるし」
「でもAUは、東京ブランドなので、もっぱら支援の時に社員割引でセール商品を買うくらいです。でもやっぱりセールとは違いますね。このニットのワンピとか可愛いし」
「ホールガーメントだな。縫い目がなくて着心地も良いし、試着してみる?」
「……売りつけようとしてません?」

 疑いの目で見ると、ははっと笑って。

「してない、してない。でも着て見せて」

 

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