「ヒナちゃん。良かった、いた。遅くなってごめん。待っただろ」
顔を上げるとそこには、申し訳ないって顔をして私を見下ろしているウサギさんの姿が。
私は目を瞬かせる。来てくれた。
「ごめんなさい」
思わず口走ってしまった。意味不明な言葉にウサギさんは目をパチクリ、驚いた表情で自分の顔を指さす。
「遅れてきたのは俺だよ? なんでヒナちゃんが謝るの」
「いえ……あの」
本当のこと言わなきゃって思うのに、言葉が出てこない。
俯いて、無言になってしまった。きっとウサギさんを困らせている。
「えーと。お腹空いたろ。とりあえず、行こうか」
ウサギさんが歩き出す。
「ヒナちゃん、どうしたの? ほら、行くよ」
振り返った彼は、立ち上がれず、座ったままの私の所へ戻ってきて、膝を曲げ腰を落とす。
「ひょっとして、疲れて動けなくなった?」
「いえ、そんなことは」
「助けた方がいい?」
「大丈夫です、立ちます。すみません」
慌てて立ち上がり、バッグを手にする。
「行きましょうか」
「あれ、ヒナちゃんのスマホじゃないの?」
「えっ」
振り向くと、ベンチにスマホが。うっかり、置き去りにするところだった。
「すみません、ありがとうございます」
☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡