ウサギとヒナ 第一話 運命の糸

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 待ち合わせ場所は大阪駅の連絡橋口の付近。ベンチがあることにほっとしつつ腰を下ろす。
 普段、座って仕事する私にとって、一日中立ち仕事、しかも慣れないセールは、結構きつかった。足がだるい。ふくらはぎを摩りながら、スマホの時計を気にする。
 ウサギさん、何時になるのかな。連絡先を聞いてないから、電話も出来ない。

 待つこと三十分、ちょっと不安になってきた。来ない、なんてこともありえるかも。
 目の前を通り過ぎていく人の中からウサギさんの姿を探す。
 このまま来なかったら、どうしよう。いつまで待てばいいんだろう。もう四十分経ったよ。朝にした約束なんて覚えていないのかも。
 一時間待って来なかったら、帰ろうかな。

 でも、あの日。
 ウサギさんは私が来るのを二時間以上待っていた。あの時、ウサギさんはどんな気持ちだったんだろう。
 私は自分の胸に手を置いて、ギュっと目を閉じる。
 謝らなきゃ。酷いことした、待たせてしまって、嘘ついてごめんなさいって、ずっと謝りたかったんでしょう。
 なのに帰ってしまったら、本当のことも、謝ることも出来なくなってしまう。

 やっと会えたのに。

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