ウサギとヒナ 第一話 運命の糸

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「ヒナちゃん。良かった、いた。遅くなってごめん。待っただろ」

 顔を上げるとそこには、申し訳ないって顔をして私を見下ろしているウサギさんの姿が。
 私は目を瞬かせる。来てくれた。

「ごめんなさい」

 思わず口走ってしまった。意味不明な言葉にウサギさんは目をパチクリ、驚いた表情で自分の顔を指さす。

「遅れてきたのは俺だよ? なんでヒナちゃんが謝るの」
「いえ……あの」

 本当のこと言わなきゃって思うのに、言葉が出てこない。
 俯いて、無言になってしまった。きっとウサギさんを困らせている。

「えーと。お腹空いたろ。とりあえず、行こうか」

 ウサギさんが歩き出す。

「ヒナちゃん、どうしたの? ほら、行くよ」

 振り返った彼は、立ち上がれず、座ったままの私の所へ戻ってきて、膝を曲げ腰を落とす。

「ひょっとして、疲れて動けなくなった?」
「いえ、そんなことは」
「助けた方がいい?」
「大丈夫です、立ちます。すみません」

 慌てて立ち上がり、バッグを手にする。

「行きましょうか」
「あれ、ヒナちゃんのスマホじゃないの?」
「えっ」

 振り向くと、ベンチにスマホが。うっかり、置き去りにするところだった。

「すみません、ありがとうございます」

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