大歓迎だよ、なんて言うんじゃなかった。
「いいのか? 俺一人でもやれるぞ」
隣で手際よく焼きそばを炒めるお兄ちゃんに言われ、私はお好み焼きをひっくり返しながら、盛り上がるテーブル席に視線を向ける。
「いいよ、みんなお腹空かせているし、お兄ちゃん一人じゃ大変だもん」
なんてのは建前だ。
ただ、あの輪の中に入れないだけ。だって、あそこに座っている人は、みんなバスケ仲間。そして話題を盛り上げているのは川本さん。
「準決勝の時、ユキさん足首痛めてたのにテーピング巻いて試合でてましたよね」
「よく知ってるな」
「だってファンですから」
「こいつ、言い出したら聞かねぇんだよ」
「最後の試合なんて、もう涙で見えないくらい泣きました。ユキさんのプレーする姿を見るのもこれが最後だと思ったら悲しくて」
「川本さん、そんなにユキのファンだったの?」
「そうですよ。だからこうして隣にいるのが嬉しくって。もう夢みたいです。そうだ、一緒に写真撮ってください」
ユキ君の腕に自分の腕を絡ませ、自撮りでツーショット。
「豚玉とイカ玉でーす」
二人の間に割り込んで、焼けたお好みをテーブルの鉄板へ乗せた。ユキ君と目が合い、私はにっこり微笑んで。
「トンちゃんダブルも、すぐお持ちします」
ついでに私の気持ちもね、と心で呟いた。