私の彼はSE 恋愛相談 一部公開

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 ようやく気が済んだのか、自分のスマホをテーブルに置いた。
 雄大の手首に意識が集中する。見覚えのないミサンガ。こんな趣味あったっけ? 手作り? それ、どうしたのと、訪ねようとした時、目の前に雄大の手が伸びてきた。
「何やってんだよ。さっさと出せよ」
 やっとこっちを見たかと思ったら、これか。雄大の掌に、黙ってスマホを乗せた。
 こんな彼の態度に、もうすっかり慣れてしまった。文句を言ったり、拗ねたりなんて気すら起きない。
「プハッ、しょーもねぇ。何言ってんの。こいつアホだよな」
 同僚とのLINEトークを読んで笑っている。
「この橋本って、誰?」
「人事部に移動になった人」
 私のスマホにアドレスが増えると男女問わず、根掘り葉掘り質問してくる。どんな関係か、どこで知り合ったか。少しでも疑わしい相手には直接電話を掛けて確かめる、なんてことも平気でする。だから迂闊にアドレスを増やすことは控えている、特に男性は。
 こういった行為も最初は、ヤキモチ妬かれているみたいで、嬉しかった。でも単に支配欲が強いだけだと悟ってしまうと、正直嫌になる。
「ねぇ、いい加減、こういうのやめてくれない?」
 ダメもとで言ってみた。それまで横向きだった体が正面を向く。眉間にシワを寄せて、気に入らないって顔。いつもなら、ここで黙り込む。でも今日は、絶対やめてくれとハッキリ言うつもり。だって、本当にスマホチェックには、うんざりしているのだから。
「なんだよ、それ。見られて困ることでもあるのか」
「無いよ。あるわけないでしょう。付きあって二年も経つんだよ。一度だってそんな疑わしいこと無かったでしょう。いい加減信じてほしいって言ってるの」

 雄大は、チェックを終えたスマホをテーブルに置いて、スッとこっちへ滑らせた。
「お前は、騙されやすいし、変なメールやLINEが来ても判断できないだろう。これは、お前のためにやってるんだぞ」
 なりすましが流行ったのは、少し前のこと。知らない人からの友だち申請も迷惑メールも無視しているし、フィルターだって掛けている。お前のためなんて、ちっとも思っていないくせに。
「トーク内容まで見る必要ある?」
「やましい事でも、あるのかよ」
「だから無いって」
「だったら、文句言うな」
 強い口調でピシャリ。結局、それ以上言えなくなってしまう。

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