恋の時間ですよ 第6章 初めての

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海遊館の年パスを持ってると言われ、ちょっと驚いた。USJは聞いたことがあるけど、水族館にも年間パスがあるんだ、知らなかった。

「私なんて水族館も初めてなのに」

「ええっ、そうなのか」

逆に驚かれてしまった。

「小学校の修学旅行先、伊勢神宮と鳥羽水族館だったんだけど、熱出して行けなかったし。テレビの特番で白浜アドベンチャーのイルカショーを見たくらいかな」

父親が生きていた頃は定休日もなく、家族揃って出掛けるなんて皆無だった。父親が亡くなってからは、母親が一人で店を切り盛りしていたので、私も兄貴も自然と店を手伝うようになって、どこかへ連れて行ってなんて言えなくて。

「じゃあ、初水族館?」

「だからすごく楽しみ」

ユキ君が、ニコッと笑って私の頭をくしゃっと撫でる。

「じゃあ、たくさん楽しもうな」

「うん」

休日の海遊館、想像以上に人が多かった。ファミリーが多い、そしてその次がカップル。

「連休だから、やっぱめっちゃ混んでるな」

「うん、すごいね」

すっぽりと私の手を包む大きな手、思わずユキ君を見上げる。

「デートだから、いいだろ」

「手だけ、だからね」

「キスは?」

「あるわけないでしょうっ」

「舞には、貸しがあるんだけどな」

ううっ、痛いところをつきやがって。じっとりユキ君を睨む。

「そんな顔してると、本当にキスするぞ」

「なっ」

「嫌ならニコニコしとけよ」

「ううっ」

「ほら、行くぞ」

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