「大丈夫か?」
ユキ君が顔を近づけて、私の顔をのぞく。あわあわ、口をぱくぱく、もうだめ、声も出ないよ。
「真っ赤だぞ。どんだけ飲んだんだ?」
それはお酒ではなく、ユキ君のせいだ。
「どうせアホほど飲まされたんだろ?」
足を取られるほど飲んでいないのに、もう何も言えず、黙って繋がれたまま駅まで歩いた。
ホームでも手を繋いだままで、やっと離してもらえたかと思ったら、今度は車両ドア付近のシートの背にもたれて立つ私を周りから遮断するようにユキ君が立っていて。ちょっと揺れるだけでユキ君に密着。二人の世界に浸っていちゃいちゃしていると周囲の人は思っているかも、違うのに。
その間、私の心臓はドキドキ、顔は火照り、変な汗までかいて、早く解放されることを密かに祈っていた。
ところが。
最寄り駅に到着、ここでバイバイするかと思いきや、彼は一緒に電車を降りようとする。
「ええっ、いいよ。うちは駅のすぐ裏だし」
「遠慮すんなって。送ってやるって言ったろ」
遠慮じゃないのにーっ。
電車から降りるとユキ君は、また私の手を握って歩き出す。人もまばらなのに、どうして手を繋ぐ必要が?以前、彼は私のことが気になると言った。その理由は自分でもよく分からないとも言っていた。いい加減、はっきりさせておかなければ、これからもずっとユキ君に振り回されてしまう。
「ねぇ、こんな風に手を握ったり、わざわざ送ってくれたり、彼氏でもないのに」
ユキ君が足を止めた。手を握っていたので私も止まるしかなく、隣にいるユキ君の顔を見上げると目が合って、私の心臓が高鳴る。
「そんなこと言われても、お前が心配で、ほっとけないんだって。ほら出会ったのがアレだろ?」
ユキ君は、クッと笑って。
「・・・白の花柄」
「そこ思い出さんでいいわっ」
全くもう、余計な記憶は消してくれ。ぷりぷりしていると。
「俺が思うに、お前に対する感情って―――――」
ユキ君は少し考えてから。
「親が子供を心配するのと同じだな、多分、うん」
一人納得して頷いている彼の一言に、ほろ酔いもすっかり冷め。
私は目を丸くさせて、大きな声で聞き返した。
「子供?」