恋の時間ですよ 第4章 最低!

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ユキ君なんか関係ない。迎えに来るって言っても断ってやる。そう決心して電話に出たはずが。

『15分くらいで着く。店の前で待ってろ 』

言い返す間もなく、電話を切られてしまった。これってちょっと一方的過ぎない?で、結局、文句の一つでも言ってやりたいと二次会も行かず、彼が来るのを店先で待っているんだけど・・・。

「舞」

私を呼ぶ声にハッとして、顔を上げた。ポケットに片手を突っ込んで立つユキ君を見て、自分でも訳のわからない感情が湧きあがる。腹立たしいのと嬉しいのとが入り混じって涙が出そう、もういっぱい、いっぱい。

「ほら、土産」

差し出した紙袋、のぞくと韓国のりのパッケージがいくつも入っていて私は目を瞬かせた。お土産って言ったよね?

「時間がなくて、空港でそれしか買えなかった」

「韓国に行ってたの?旅行?」

ユキ君はうんざりした顔で。

「そんないいもんじゃねぇよ。おっさんらのゴルフに付き合ってただけ」

楽しくも何ともないと、ぼやくように言う。なんだ、そっか、それで見掛けなかったんだ。

「ありがとう」

「んじゃあ、帰ろうか」

ユキ君は当たり前のように私の手を握って歩き出す。

「ユ、ユキ君、手、離して」

男の人と手を繋いだ経験のない私は驚きとドキドキで心臓がどうかなっちゃいそう。ユキ君の手を振り払おうと必死でもがいた。

「暴れるなって。人にぶつかるぞ」

「大丈夫だよ、いいから離してって」

腕を引っ張られたかと思ったら突然、目の前が暗くなり、キィーッと自転車のブレーキ音が聞こえた。

「ったく、どこが大丈夫なんだよ」

掌に触れているのはユキ君の胸だ。弾力があって、それでいて硬い。うわーん、くらくらしてきた。はぁはぁ、酸欠状態だ。息ってどうやってするんだっけ?

 

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