断りもなく隣へ座ったユキ君は上半身を私に向け、テーブルに片肘を乗せ、頬杖をつく。私の背もたれに伸ばしたユキ君の腕が背中に当たっている。ヤバい、気を抜くとへにゃへにゃになっちゃう。私は背もたれから背中を離し。
「声を掛けてきたのは本当でしょう」
身構えるように腕を組んで、ユキ君を睨みつけた。
「まぁな。けどよ、その言い方だとナンパしたみたいに聞こえるだろ」
正面にいる先輩たちもこくこく頷いている。
「なんで毎回現れるのよ。私を見張っているとか言わないわよね?」
こうも都合よく、毎回、毎回現れると見張られている気がしてならない。
ユキ君は眉間にシワを寄せ、口をへの字に曲げた。
「そんなつもりはないんだけどよ。どうもお前が目につくんだよな。気になるって言うか。うーん何でだろうな」
自分でもよく分からないと言う。
「その人とどんな関係なんですか?」
突如、どこからか女性の声がした。見ると五、六人の女性社員がツカツカヒールを鳴らし、迫る勢いで近づいて来るではないか。
ユキ君はうんざりした顔で「勘弁してくれよ」と呟き、テーブルに顔を伏せた。
「彼女じゃないですよね」
「違いますよね」
彼女たちは口々にユキ君を責めている。まるで、恋人の浮気現場を押さえたみたいに。
嫌悪感を露わにしたユキ君が「関係ないだろ」と返しても。
「あります」
「そうです。どういう関係なんですか」
一向に引こうとしない。
髪をアップにし、中心にいる女性が私をギロリと睨む。怖・・・・。