今日から私も会社員。張り切っていたせいか、早く会社に着いてしまった。隣の公園で、時間を潰すことにしよう。角のコンビニで温められたペットボトルのミルクティーを買い、ベンチに腰掛ける。青く澄んだ秋の空を見上げると。
「あ、お月さま」
白い月が半分だけ顔をのぞかせている。私はにんまりしながらミルクティーを口にした。子供の頃から青空に浮かぶ白い月を見つけると。
「今日はいいことあるかも」
なんて思ってしまうのだ。
「こんな所で何やってんだ」
ドキッ。いきなり後ろから声を掛けられ、口に含んだミルクティーをゴクッと飲み込んだ。
「ユキ君こそ、どうしてここに」
「舞がいたから」
えっ。私がいるからって、何で?私はぽかんと口を開け、ユキ君を見上げる。
「会社にも入らず、ベンチにぽつんと座っていたら気になるだろ」
そう言ってユキ君はベンチを跨ぎ、隣に腰を下ろす。大きな手に握られた缶コーヒーがすごく小さく見える。うーん、スーツだと逞しい腕が見えなくて残念。上着脱いでちょっと袖捲ってくれないかな。背筋とか、お尻とか太腿も筋肉ついているんだろうな。
「舞?」
「えっ」
ハッと我に返るとすぐ目の前にユキ君の顔が。私の顔をのぞき込んでいる。
びっくりしてお尻が浮いた。その拍子に後ろへ倒れそうになり。
「あ、あわわ」
背中に伸びた腕が私を支えていた。
「何やってんだよ、大丈夫か」
鍛えた体に抱きしめられて・・・・。
あ、だめだ、力が入らない。もう、ずーっと抱きしめていてほしい。はぁ、この体、一日中触っていたい。
「舞?」
「ん?」
「本当に大丈夫か?虚ろな目でぼーっとしてるぞ」
しまった。また意識が飛んでいたんだ。ううっ、この魅惑的な体のせいで。