どこへ連れて行こうか。旅行なんてほとんどしたことが無いと言っていたもんな。
俺と一緒ならどこでもいいって、くそっ、可愛いこと言ってくれるから困るよ。これはもう絶対、喜ばせないと。
とは言え、俺もデートらしいデートってほとんど経験がない。いつもホテルか彼女の部屋でやって、終わったら帰るコース。女を喜ばそうなんて思ったこともない。舞にはそんな扱い、絶対出来ねぇ。
「つーか、俺が無理だな」
嫌われたくねぇもん。
他の女とは違う。遊びじゃない、真剣に付き合っていると舞に分かってほしい。毎日会いたいし、離れている時は声が聞きたくてしかたない。キスしたいし、男だからもちろんやりたい。でも、それは欲望の吐け口としてではなくて、すげぇ大事に思ってるって伝えたいんだ。だからこの旅行は、なにがなんでも成功させないと。ああ、マジでどこへ行こうか、悩むわ。
車で移動中、スマホで旅行先を検索していると。
「何やってんだ?」
ハンドルを握る真理が、横目で薄笑いを浮かべている。
「週末に泊まれそうなところ探してんだよ」
不愛想に返す俺を見て真理がニヤニヤ。
「舞ちゃんか」
全部お見通しかよ。
「・・・だったら何だよ」
「いや、可愛いなって思ってさ」
「うっ、煩せーよっ。可愛いって言うな」
「熱出すほど舞ちゃんが好きだもんな」
「それ、舞に言うなよ。もし言ったら兄弟の縁切るからな。本当だぞ」
「分かった、分かった。ムキになるな。けど、彼女に嫌われたって知恵熱出すとか、お前ってホント可愛いよ」
「ち、ちげーってんだろ。あれは風邪だ」