「ここ、賃貸ですか?」
「うん」
駅からも近いし、家賃高そう……。
「あの……ご存じでしょうが、新入社員の給料ってそんな高くないんですよね。なので、私が今、払っている家賃くらいで」
恐る恐る言うとウサギさんが目を丸くさせた。
私は手をパチンと合わせ、お願いポーズ。
「食費と光熱費は折半でいいので、家賃だけ、いくらかまけてください。お願いします」
「金をとるつもりはないんだけど」
「でも、それはさすがに」
「ヒナが越してきてくれるだけで、十分。心配しなくても、家賃はそれほど高くないんだ。と言うのも幼馴染が所有しているマンションで安くしてもらっているから」
幼馴染がオーナー? このタワーマンションの?
車だけでなく、こんな高級マンションまで、格安で貸すって、よほど仲の良い幼馴染なんだな。
「羨ましい。私もそんな幼馴染、欲しい」
「そうか? 面倒くさいこともあるけどな」
面倒くさい? 幼馴染って面倒くさい存在なの? 首を傾げつつ、ウサギさんについていく。
扉を開けると、ベッドしかない、シンプルな部屋だった。