髪を乾かそうとドライヤーを手にした時だった。
ベッドの上に放置していたスマホが鳴っている。急いで手に取ると『ウサギさん』だった。
「もしもし?」
『ヒナ、何してんの?』
声を聞いただけで、泣きたくなった。
「それは……こっちのセリフです」
『さっき、仕事終わったんだよ。今から会いに行っていいか?』
「これから、ですか」
「実は、もう近くまで来てる」
「えっ」
それは困る。だって、私、髪も乾かしてないし、高校の体操服着ているし。
「一時間後にしてもらってもいいですか?」
おたおたしていると『無理、もう着いた』インターホンが鳴った。
「嘘っ」
どうしよう、こんなカッコ見られたくない。せめて着替える?
「あの……十分だけ、待ってもらっても。とても外に出られるカッコじゃないので」
『裸なのか』
「違いますっ」
『んじゃあ、いいよ。顔見たら帰るし。つーか、早く開けてくれ。怪しまれて通報される』
ええい、もう、どうとでもなれ。扉を開けた。
ウサギさんの顔を見たのは一瞬だけ。だって、次の瞬間、私はウサギさんに抱きしめられていたから。
ドキドキする。ウサギさんに聞こえちゃうんじゃないかって思うくらい。
「ヒナ」
見上げると、ウサギさんが顔を近づけてきて、冷たい唇を私の頬に押し当てる。
「風呂上がりのヒナも可愛いな。それに、その体操服、そそられる。今度、制服も着て見せて」
「変態ですか」
「かもな。それより髪、乾かしてやろうか」
ウサギさんに?