「ごちそうさまでした」
「どういたしまして」
大満足でお店を出た。そしてハッとする。ヒレカツとエビフライに夢中になってすっかり忘れていたけど、私のモヤモヤは解決していない。
横断歩道、信号は赤。今なら、話せるかも。
「あの」
「俺、ちょっとコンビニ寄ってくわ」
「えっ」
「じゃあ、また」
私に背を向け、すぐ側のコンビニへ向かって歩き出す。
じゃあって、じゃあって。
置いてきぼり食らったわんこの気分なんですけど。
そしてその夜も私はスマホを片時も離せなくて。
ひょっとしたら、夜も誘われるかも、って心のどこかで思っていた。
でも電話も鳴らない、メールもLIMEも届かない。日帰り出張、だったのかな。
それとも、会社の人や取引先と飲みに行っているのかも。
「あーもうっ。考えるのは、やめよう」
お風呂に入って、身も心もスッキリさせよう。そう思ったのに、心は全然スッキリしなかった。
「ウサギさんのあほ。もう絶対、振り回されないから」