大急ぎでシステムの入力状況を確認し、不足の情報を足す。それから中島さんへインボイスのコピーを手渡した。
「お願いします」
「ありがとう」
引き出しから食券カードを取り出し、ハンカチとスマホを掴んでエレベーターホールの前へ行く。
昼間ってエレベーターがなかなか来ないんだよね。ああ、お腹空いたな。ランプが点滅するのを今か今かと見つめていると。
チーン、背後からエレベーターの到着音が聞こえ、振り返った。
「失礼します」
乗り込もうとした私の足が止まる。
そこに思わぬ人物が乗っていたからだ。驚きで飛び出しそうになった彼の名前をごくり、飲み込んだ。
数人の社員が乗るエレベータ、中央に彼が立っている。
思わぬ出来事に、片足乗せたまま、固まってしまった。
まるでコンクリートで塗り固められたみたいに足が動かない。目の前にいるウサギさんは目を細め、笑いを堪えている感じ。
乗る?
乗らない?
行ってもらう?
ここで乗らなかったら変に思われるよ。なんとか足を前へ動かし、エレベーターへ乗り込んだ。