時計を見れば二十三時半を過ぎたところ。
明日は平日、ユキ君の朝は早い。私だって仕事がある。
このままいちゃいちゃしながら寝るのもありだけど、今夜はもう少し話がしたいな。
そんな私の考えが伝わったのか、それともユキ君も同じ気持ちだったのか。
「お茶でも入れようか?」
と彼が言った。なんとなく嬉しさが込み上がる。
「私が入れるから、ユキ君は座ってて」
「舞が見たいって言ってた、海外ドラマ録画してるけど見る?」
「うん」
キッチンへ行き、棚の扉を開けた。ふと見慣れない器が目につき、手に取ってみる。
ユキ君のお母さんが用意したものと違う猫の絵が描かれたとんすい。ユキ君が選ぶとは思えない。
それに数も多い、ざっと見たところ、十はある。
「ねぇ、これ、どうしたの?」
私はとんすいを持ち上げ、ソファに座ってリモコン操作するユキ君に見せた。
「会社のメンバーと、ハモ鍋やった時のかな」
「会社の人が来るんだ」
私のいない平日に、見知らぬ誰かが出入りしている。
「よく来るの?」
「よくってこともないけど、会社が近いせいか、どこかで飲んだ帰りに数人で押しかけてくることはあるかな」
心が、ざわついた。