突然の訪問にユキ君は、ビックリしていた。でも「会いたくなった」と言うと、凄く喜んでくれて、玄関先で抱き締められた。
「言ってくれりゃ、駅まで迎えに行くのに」
前もって行くって言うと証拠隠すから連絡しちゃダメよ、と林先輩に釘を刺されていたから、なんて言えるはずがない。
私の胸は、罪悪感でいっぱいになった。
「うん。驚かせたくて……」
「そうか。でも、来る時は、出来るだけ電話して?」
「……や、やっぱり突然来たら、迷惑だよね?」
上目づかいでユキ君の顔をのぞくと、フッと彼が目を細めて、私の頭を撫でる。
「そんなわけないだろ。最終のバスに一人で乗って来たって言うから。マンションに近いとはいえ、街灯も少ないし、危ないだろ」
「大丈夫だよ」
「何言ってんだよ。バス降りた途端、いきなり襲われたり、変な奴に声掛けられたらどうすんだよ」
「心配性だね」
「するだろ、普通」
そんな優しいこと言われると、自己嫌悪に陥るよ。
胸がチクチクする。ユキ君、ごめんね。
「ユキ君、ギューッてして」
ギュッと抱きしめられると嬉しくて顔がにやつく。
浮気なんて信じてないのに、先輩にのせられてここへきたけど。
本当は私が、ただユキ君に会いたかったんだ。
ユキ君の匂い、ユキ君の声、ユキ君の心臓の音、硬いお腹、うわーんっ、ユキ君、好きだーっ。
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