あっという間に商店街の人が集まってきて、店の前に人だかりが出来てしまった。
まるで囲み取材。
「結婚するって、本当か」
「たった今、プロポーズされとったぞ」
「そいつはなかなかやるな、兄ちゃん」
「だろ? 俺もそう言ってやったんだよ」
「ちょっと、いい男だね」
「今はイケメンって呼ぶらしいよ」
逃れるように店へ飛び込めば、お母ちゃんとお兄ちゃんが待ち構えている。
「で、話はついたの?」
「う、うん」
私はユキ君の顔をチラリ。
小さく頷いて、唾をゴクリ、飲み込んだ。
「お母ちゃん、お兄ちゃん、私、ユキ君と結婚する」
ひゃーっ、言っちゃった、言っちゃった。
まだ早いとか、店どうすんのとか、何を言われるのか考えただけでドキドキ。
緊張する私に返ってきたのは。
「良かったね、舞」
お母ちゃんの笑顔だった。
「い、いいの?」
「当たり前だよ、いやだね、この子ったら。反対でもされると思ったの?」
「だって、店が」
「ユキ君と付き合ってんのに、いつかこんな日が来ることくらい想像つくわよ。店はいいから、あんたは自分が幸せになることだけを考えな」
「そうそう、店のことは心配すんな。俺と文香が手伝うから」
「お母ちゃん、お兄ちゃん、ありがとう」
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