確か、お母さんは専業主婦だと聞いた。
きっと何から何まで世話してあげて、息子をキッチンに立たせる、なんて事は、させなかったのだろう。
「掃除は、どうしてるの?」
「掃除くらいは出来るぞ」
「じゃあ洗濯は? もしかして実家に持って行ってるとか」
「クリーニング」
「ええーっ、嘘でしょう。まさか下着も……」
「あ、それはクリーニング屋で断られたから、使い捨て」
なに?
「使い捨て?」
「だってよ、自分で洗濯なんてしたことねぇし、どないやって使うか分かんねぇもん。だからって実家に送るのも面倒だから」
こいつ、やっぱ感覚が坊ちゃんだ。
「なんのための洗濯機だよ? あれはただの飾り? 洗濯物入れて、洗剤投入してボタン押したら良いだけじゃない。もう、使い方教えてあげるから、やんなよ」
「また今度でいいよ」
「もうっ、何も出来ないなら一人暮らしなんてすんなっ」