「とりあえず、チンすれば食べられるように、何か作って冷凍しておくね」
ユキ君の食生活が気になっていたから、色々作って冷凍するつもりで食材を買い込んできたんだよね。
ところが、彼ときたら。
「チン?」
何ですかそれ、とでも言いたげな表情をする。
私はオーブンレンジを指さした。
「レンジだよ。チンするだけだから簡単でしょう?」
ユキ君は、えーっと不満気に声を発した。
そして刀を一振りしたみたいにバッサリ。
「面倒」
あぎゃーっ。
「は?」
「どんぐらい温めるのか分かんねぇし、冷凍してくれても多分食べないから、いいよ」
な、なにーっ。温めるだけでしょう、どこか面倒なのよ。
「チンしたことないの?」
「ない」
ユキ君は、再び冷蔵庫を開け、二本目のビールを取り出した。
「包丁を持ったことは?」
「ない」
即答ですか。