恋の時間ですよ 第14章 坊ちゃん、心配です

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「冷蔵庫デカっ」

何でもデカくないと気が済まんのか、お坊ちゃま。

「中はビールくらいしか入ってねぇけどな」

観音開きの冷蔵庫を開けて缶ビールを取りだすユキ君の脇から中をのぞくと、本当に缶ビールが十本入っているだけだった。うちの家の冷蔵庫なんて、食材ギューギューだぞ。

プシュッと缶蓋を開ける音がした。昼間っからいきなりビール、もう今日はどこへも出かけないということだな。
ゴクゴクと美味しそうに飲むユキ君を横目で見つつ、買い物してきた食材を冷蔵庫へしまった。

「コップやお皿はあるの?」

食器棚には、花柄のお皿やカップが並んでいる。ユキ君の趣味? ではないよね。
引き出しを開けるとお箸とスプーン、ラップやアルミホイルも入っていた。
でも油や調味料はなく、キッチンも使った気配がない。

「お袋だよ。生活必需品一式詰め込んだ段ボールを引っ越しの時に押し付けられた」

なるほど。

「こっちに来てから、ご飯はどうしてるの?」

「朝は会社行ってから珈琲飲むくらいか。昼と夜は、外で。仕事がらみの飯が多いかな」

「体、壊すよ」

「気をつける」

って言ってもね。何をどう気をつけるんだろう、心配だな。

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