「冷蔵庫デカっ」
何でもデカくないと気が済まんのか、お坊ちゃま。
「中はビールくらいしか入ってねぇけどな」
観音開きの冷蔵庫を開けて缶ビールを取りだすユキ君の脇から中をのぞくと、本当に缶ビールが十本入っているだけだった。うちの家の冷蔵庫なんて、食材ギューギューだぞ。
プシュッと缶蓋を開ける音がした。昼間っからいきなりビール、もう今日はどこへも出かけないということだな。
ゴクゴクと美味しそうに飲むユキ君を横目で見つつ、買い物してきた食材を冷蔵庫へしまった。
「コップやお皿はあるの?」
食器棚には、花柄のお皿やカップが並んでいる。ユキ君の趣味? ではないよね。
引き出しを開けるとお箸とスプーン、ラップやアルミホイルも入っていた。
でも油や調味料はなく、キッチンも使った気配がない。
「お袋だよ。生活必需品一式詰め込んだ段ボールを引っ越しの時に押し付けられた」
なるほど。
「こっちに来てから、ご飯はどうしてるの?」
「朝は会社行ってから珈琲飲むくらいか。昼と夜は、外で。仕事がらみの飯が多いかな」
「体、壊すよ」
「気をつける」
って言ってもね。何をどう気をつけるんだろう、心配だな。