ダイニングへ行くと、香ばしくて甘い香りがする。
テーブルの上には、美味しそうなパンが盛られていた。
公園で出社前の早朝デート、ユキ君がお母さんの焼いたパンをよくもってきてくれた。
生地がふわふわで、美味しかったんだよね。
きっとこれもお母さんの手作りパンだ。私の頬が緩む。
「おはよう、よく眠れた?」
ユキ君のお母さんは、小柄で笑顔が魅力的な可愛い人だった。お父さんが溺愛するのも分かる。
「す、すみません。酔っぱらって、泊めて頂いたなんて。ご迷惑かけて申し訳ありません」
「なに謝ってんだよ。舞は、悪くねぇぞ?」
ユキ君が私の頭にポンと軽く手を乗せて言う。その手から逃れるように体を斜めへずらす、すると、ユキ君がちょっとムッとした。
「なに、その態度」
「なにって、別に」
「ふーん」
ユキ君、なにを考えているのか、後ろから抱きついてきて、強引に頭をぐりぐり。
やめてくれぇーっ。
母親の前で、息子が彼女といちゃいちゃしてたら、その彼女は、嫌われるって雑誌に書いてたんだから。
これ以上、嫌われるような事は、絶対避けたい。
「舞のくせに、生意気。なに避けてんだよっ」
「いや、そうじゃ無くて」
クスッと笑う声にハッとする。見るとお母さんが口元に手を置いて笑っていて。
「仲良しね」