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ユキ君の家を出た後、行きたい所があると言って、ユキ君が連れて行ってくれた店は、映画でも有名な、ティファニーだった。
これまで私には無関係だったアクセサリーショップ、しかも有名ブランドへまさかの入店。
一人なら敷居が高すぎて冷やかしですら入れない。緊張気味の私とは真逆で、平気な顔して中へ入って行くユキ君。
「ユキ君、ここ、来たことがあるの?」
「前に一度。指輪買いに」
うぎゃっ。それは、誰かにプレゼントしたことがあるってことだよね? 前カノとか? 聞くんじゃなかった。
昔の彼女に指輪をプレゼントしたなんて言われたら、やっぱり面白くない。
落ちこむ私の背中にユキ君が手を添える。
「薫と世那が行くって言うから、ついてきただけ」
お兄さん夫婦と聞いてホッと胸を撫で下ろしている私を見て、ユキ君がニッと笑う。
人の反応見て楽しんだな?
「もうっ、趣味悪い。意地悪」
「女にプレゼントするとか、今まで一度もねぇよ。舞が初めて」
胸キュン。ああ、ユキ君。無意識かもしれないけど、その言葉、私にとっては、かなりドキドキものだよ。
「いらっしゃいませ。本日は、どのような品をお求めですか」