恋の時間ですよ 第8章 異動

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電話を切った後も俺たちは水族館を満喫した。舞は何を見ても面白いのか、よく笑う。でもよ、もうちょっとデートだって意識してくれてもいいんだけどな。

「ユキ君、オオサンショウウオがいるんだって。どこだろ」

水中の生き物に夢中。これくらい俺の事も夢中になってほしい。

「よく分かんないね。ユキ君、ねぇユキ君たら。ちゃんと探してよ。特別天然記念物なんだよ。そう滅多に会えないんだから」

「探してるよ」

「嘘ばっかり。全然、水槽見てないじゃない」

俺は舞の肩を抱き寄せ、にっこり笑って。

「舞を見てた」

おっ、このセリフ、結構有効かも。

「そんなのいいから、水層見て」

ガックリ。小さなため息を零す。俺って、そんなの扱いなの?まさか、オオサンショウウオに負けてる?くそっ、天然記念物がなんだってんだ。

「なぁ、本当にデートだって分かってるか」

「分かってるよ。これがデートじゃなきゃ、何になるの?」

「・・・だな」

ちっ、しょうがねぇな。

「ほら、あそこにいるだろ。よーく見てみろ」

岩場の陰でじっとしているオオサンショウウオに向かって指さす。舞は驚いた表情、目を丸くさせ。

「デカッ。ちょっとイメージと違う」

残念そうに言った。ふっ、この勝負、俺の勝ちだな。

「次、行く?」

「うん」

場所を移動、メインの水槽へ行ってみた。アクリルガラスに張りつくように皆が注目しているのは、水槽の中で魚に餌をやっているダイバー。

「人が多くて見えない」

「少し待ってると空くよ。後ろで待ってよう」

壁際に舞を連れて行った。

「やっぱり、もっと前に行こうよ」

戻ろうとする舞をつかまえ。

「舞」

「えっ」

顔を上げるところを狙って素早くキスをする。唇を軽くかすめた程度。

「ユ、ユキ君」

恥ずかしそうに俯く舞の仕草が、たまらないほど可愛くて。

「皆、水層見てるから平気だって」

顎に手を置いて、もう一度キスをした。今度はもう少し長く。

ヤバいな。夜まで俺の理性が持つか、自信ねぇな。部屋に入った途端、襲っちまいそうだ。

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