翌日の日曜日、私は焦っていた。今日はユキ君のバスケの試合。暇だったらお母ちゃんに頼んで応援へ行こうと考えていたのに。
「トンちゃん焼きそばと、洋食焼きください」
「はーい」
「ビールもらうよ」
「はーい」
「いくら?おあいそして」
こんな日に限って忙しい。
「席、空いてる?」
「いらっしゃい、カウンターで良かったら」
「すじコン入り焼いて」
客足が途絶えない。
「豚玉とミックス、お持ち帰りでお願いします」
「はい、少しお時間掛かりますけど」
「大丈夫、待つわ」
いやーん、忙し過ぎるーっ。心の中で嬉しいような悲しいような悲鳴を上げる私。ひたすら鉄板と向き合い、お好み、焼きそばをジュージュー焼く。
「ありがとうございましたー」
「おおきに」
最後のお客さんを見送った後、暖簾を取り外し店内へ入れた。
「今日、どこかでイベントでもやってたのかな」
「ほんとだね。さて、店も終わったことだし」
お母ちゃんは着けていたエプロンを外し。
「ストレス発散しに行ってくるわ。舞、後片付け宜しくね」
「えっ」
いそいそと店を出て行ってしまった。
「もうっ」
しかたなく時計を気にしながらも後片付け。うわーん、ユキ君の試合、終わっちゃうよ。
テーブルのお皿を運んでいると、カラカラッ、ガラス引き戸の開く音がした。
「すみません、もう閉店・・・」
「よぉ、しけた面してんな」
「お兄ちゃん」
近くのマンションに住む、兄だった。
「お母ちゃんならパチンコ行って、いないよ」
「知ってる」
そう言ってジャンパーを脱ぎ、トレーナーの袖を捲るとカウンターの中へ入って行く。私はそれをぼけーっと見ていた。どうしたんだろう。
「ここに立つのも久しぶりだな」
「お兄ちゃん?」
「来週末の話、聞いてるか」
私は首を横に振った。