「しかし、尾上ちゃん、強いね。酔ってないんじゃない?」
「そんな事ないですよ。結構きてます。ちょーっとだけですけどね」
「一人で帰れるか?タクシーで帰った方が」
心配そうにする部長。私は背筋をシャンと伸ばした。
「まだ早いですから、心配無用です。ここだと大阪駅が一番近いんですよね。環状線で帰ります。あ、精算は割り勘で」
「奢るのに」
「ダメです、ここはきっちり三等分でお願いします」
「じゃあ、尾上ちゃん2千円だけだして。残りは俺と部長が」
私は財布から5千円を出し。
「千円、お釣ください」
課長は苦笑い、結局2千円お釣をくれた。
ふわふわ、ほろ酔い気分でJRのホームへ向かう。それにしても料理も日本酒も美味しかったな。意外と日本酒も飲める口だったんだ、私。なんて思いつつ乗った電車。次の駅で前のシートに座っていた人が降りたので。
「ラッキー」
座らせてもらった。シートに座ってしばらくすると睡魔が襲ってきて、うつらうつら。
このとき、私はまだ気づいていなかった。酔っていたせいか、内回りと外回りを間違えていたのだ。でも、そこまでは良しとしよう。問題は、奈良や関西空港、和歌山方面へ向かう電車も環状線を走っていて、すぐにやってきた紀州路快速に飛び乗ってしまったのだ。その電車は天王寺から路線が変わり、日根野駅で車両が切り離され、そこから和歌山行と関空行に別れる。
いつの間にか爆睡していた。目が覚めて次の停車駅で飛び降りたのはいいが。
「えっ・・・どこ?」