タクシーで向かったのは日本酒と和風創作料理の店。店の棚には、日本酒の一升瓶がずらりとならんでいる。
「尾上さん、日本酒は?」
「あんまり飲んだ事ないんですよね」
「そっか。じゃあ、ちょっとお試しで、飲んでみたら?」
野中課長に勧められ、オーナーに飲みやすい冷酒をチョイスしてもらった。
「あ・・・・美味しい」
口の中で広がる香り、スッキリとした辛口も口当たりが良い。
「なんだ、いける口じゃない。よし、じゃあ、今夜は色々飲んで、お気に入りを見つけるといいよ」
二人共、会社にいる時と雰囲気が違って、話も楽しかった。すっかり気を良くした私は、日本酒をかなり飲んでご機嫌。
「尾上ちゃん、フリーなの?もったいない。可愛いのに。ね、土方さん」
「ああ、そうだな」
「お世辞でも嬉しいでーす」
「ははは、お世辞じゃないよ、尾上ちゃん。俺が独身だったら口説いているよ」
「またまた、奥さんに怒られますよ」
はしゃいでいる横で、部長が腕時計に視線を送る。
「そろそろ、お開きにするか」
「まだ早いですよ。もう一軒行きませんか」
「用があるんだよ」
部長が帰ると言い出し、渋々課長がおあいそを頼む。