エレベーターは満員電車のように混んでいる。お陰で嫌でも彼と密着。それにしても、やたらと女子社員が多いな。4基もあるのに分散して乗ろうともせず、我も我もとこのエレベーターに乗り込んできたし。
狭い密室で、色んな香水が入り混じって、息苦しい。こんなに混むならもう少し早く会社に入ろう。そんなことを考えながらチラリと隣にいるユキ君を見上げた。
彼には私の気持ちなんて理解出来ないだろうな。背の高い彼を見下ろす人なんて、そうそういないだろうから。
「舞、11階着いたぞ」
「えっ、本当?」
同じフロアで働く人が数人、エレベーターを降りて行く。私も続いて降りようとした。
「舞」
呼び止められ、振り返るとユキ君が私の頭の上に手を乗せて。
「じゃあな、しっかりやれよ」
ニコッと微笑む。不覚にもドキッとしてしまった。
「う、うん」
エレベーターを降り、振り返るとユキ君が手を振っていて。つられて振り返そうとしたが、やめた。エレベーターの中にいた女子社員全員が怖い顔して私を睨んでいたから。
私、何かしたっけ?まさかね。かぶりを振り、フロアに入った。