「だ、大丈夫。ちょっと考え事してたから。あ、ありがとう」
慌てて立ち上がりユキ君から離れた。心臓がドキドキ、バクバクしている。これはきっとユキ君の筋肉のせいだ。決してユキ君にときめいた訳じゃない。
「舞、顔真っ赤だぞ」
「あ、暑いからじゃない?今日は気温も高いんだって。ああっ、もうこんな時間」
ちょっと、わざとらしい言い方だったかな。
「私、先に行くね」
「確かに、入社早々遅刻はマズイよな」
ユキ君が腰を上げた。
「ええっ、一緒に行くつもり?」
彼の眉と瞼がピクッと反応する。
「何だよ、一緒に行くと都合が悪いのかよ」
「そ、そうじゃないけど」
ユキ君は意地悪そうに笑い。
「ほら遅刻するぞ」
私の肩を抱こうとした。
「ぎゃーっ、何すんのよ」
私は飛び上がり、ユキ君と距離をとる。
「介助だろ、介助」
「何言ってんのよ。もう離れて、あっち行って、お願い」
「舞、前見て歩けよ。転ぶぞ」
「転ばないからっ」