土曜日、昼のピーク時を終え、一息つこうとコップに水を注ぐ。ホールのテーブル席を片付ける母を眺めながら冷たい水を口にした。流しには汚れた皿が山となっている。週末のお昼は近所の家族連れや夫婦が食べにくるだけでなく、テイクアウトの注文も多く、平日に比べるとずっと忙しい。そんな週末をお母ちゃんが一人で乗り切れるとは思えない。週末は店の手伝いを続けていく事になりそうだ。
バイクのエンジンの音が聞こえ「お客さんかしら」と言いながらお母ちゃんが店の外をのぞく。
「まだ、いけますか」
「大丈夫よ」
「お薦めは何ですか」
「うちは何でも美味しいよ。焼きそばはホルモンが入っていてね」
お母ちゃん、随分と愛想のいい声で対応しているな。客は多分若いお兄ちゃんだな。私は洗い物をしながら外の会話に聞き耳を立てる。
「じゃあ、それと豚玉お願いします」
「舞、お客さん。豚玉とトンちゃんね」
「はーい」
洗い物していた手を止め、濡れた手をタオルで拭きながら顔を上げれば。
「いらっしゃい・・・・・」
少年のような笑みを浮かべてユキ君が。
「食べに来た」
なんて言うんだもん。不覚にも胸がキュンとしちゃったじゃない。