言った後でハッと気づいて後悔。売り言葉に買い言葉。まんまとお母ちゃんの罠に引っ掛かっている。
「ははは、楽しみだねぇ」
出来ないと思っているな。ううっ、奥歯を噛んでお母ちゃんを睨む。
なめんな、ばばあ。こうなったら何が何でも仕事続けて、絶対いい男捕まえて結婚してやるっ。
「ところで舞ちゃん、随分大きなジャージ着てるけど、それ男物だろ」
古市さんの鋭いツッコミに頬がひくついた。
「えっ、ああこれ。ちょっと借りたの。着替えてくる」
厨房の奥から二階へと続く階段を上り、部屋へ逃げ込んだ。
姿見に映る自分を見てドキッ。すっぽりと私を包み込むほど大きなジャージ。折り曲げた袖口に鼻を当てれば微かに男の香り。私を抱きしめるユキ君の姿が頭の中に浮かぶ。
「あーっ、違う、違うっ」
ぶるぶると顔を横に振って、ユキ君の残像を振り払い。
「舞、早く結婚したいなら年上だよ。専業主婦になりたいんでしょう」
自分に言いきかせ、ジャージを脱いだ。