家に帰っても気分が治まらず、イライラしてクッションに八つ当たり。
「バッカみたい。ホント最低、ユキのあほ」
何度も何度もユキ君をあほ呼ばわりした。
「私のドキドキを返せーっ」
クッション、ポカスカ叩いても。
「年下のクセに、なんて奴だよ。彼女いるクセに、彼女いるクセにっ。しかも三人とか、とんでもない遊び人じゃないかーっ」
怒りは治まらない。
机の上では放置したスマホが振動。相手はユキ君からだった。鳴っては切れ、また鳴っては切れを繰り返す。
ひたすらムシした。
翌朝、ユキ君の痕跡だらけのスマホを手にため息をつく。
留守電にメッセージとLINEのトーク。
『舞、怒ったのか。気を悪くしたなら謝る。ごめん。許してよ。なあ、頼むから電話出てくれよ。舞、ごめんて』
知るかっ。
週明け、ユキ君が待ち伏せしていないかドキドキして会社へ行ったが、彼の姿はなく。お昼休みの食堂でも彼は姿を見せなくて。もしかして拗ねているのかな。いくら腹を立てても、謝っているのにムシしたのはまずかったかな。
でも彼女がいると思ったら、またムカッときて、しかも複数いると思ったらさらにムカムカ・・・・その後泣きたいような気持ちになって。
ユキ君なんか、って思うのに。
どうしてこんなに切ないんだろう。
「尾上さん、尾上さん」
「あれからユキ君とどこか行った?」
週末のことを聞かせてと、何も知らない三島さんたちは興味深々、目を輝かせている。
「どこも。まっすぐ帰りました」
そっけなく返し、スプーンを手にした。
今日のお昼ご飯はカレー。そう言えば私のカツを奪ってカツカレーにしてたっけ。
美味しそうに食べていた、あの顔が頭の中に浮かんで消えてくれない。
「ああっ、もうっ」
「尾上さん、どうしたの?」
「あ、いえ。ちょっと」
苦笑いで誤魔化した。
嫌になる。どうしてユキ君のことばかり考えちゃうのかな。
もし彼が現れて「ごめん、舞」って隣に座ったら・・・・そしたらどうする?
許す?
許さない?