正人さんは、そんなウサギさんの行動を見ても全く気にしていない。
というより、それどころじゃないって感じだ。
「そんな理由? 仕事ならともかく、ヒナちゃんといたいって……。それはないだろ。いつも俺を助けてくれたじゃないか。今回も頼むよ。そうだ、ヒナちゃんも連れていこうよ。うん、それならいいよね」
渋い顔をするウサギさん向かって、正人さんは目をパチパチさせてお願いポーズ。
「ヒナ、ゴルフしたことあるか?」
は? ゴルフ?
私は紅茶のカップを手にしたまま、首を横に振った。
「テレビ中継すら、見たことないです」
「だ、そうだ。そういうことだから」
ウサギさんが腰を浮かせようとすると、正人さんが伝票を奪って引き止める。
「ヒナちゃん、コース回れるよう練習付き合うからコンペに参加してよ。ゴルフはね、コースを歩くから、いい運動になるよ。ダイエットにも効果あるんじゃないかな。ほら裕也も、ヒナちゃんとゴルフ出来れば楽しいと思わないか」
若干、必死さが伝わってくるのは、気のせいだろうか。
「親友だろ、幼馴染だろ。助けてくれよ」
さっきから助けてくれって。それってどういう意味? 私はウサギさんに顔を向けた。
「頼むよ。俺を一人で行かせないでくれ。行こうよ、裕也」
とうとう拝みだした。
どうしてもウサギさんをコンペとやらに参加させたいらしい。