遠距離恋愛が始まって、最初の金曜日。
『週末、通うよ』と言った通り、ウサギさんは大阪まで会いに来てくれた。
待ち合わせの空港で、感激の再会とばかりに熱い抱擁とキスは、ちょっと恥ずかしかったけど。
「ホテル?」
空港からタクシーで向かい、降りた場所は大阪の街を見下ろせる有名ラグジュアリーホテルの前。
時間も遅いし、ホテルのバーで飲むのかな。なんて思いながらウサギさんに着いていく。
エレベーターは最上階客室のフロアで止まった。扉の向こうには誰もいない。
そしてウサギさんが私の背中に手を添えて降りようとする。
「ウサギさん、この階、客室フロアですよ」
シーンと静まり返ったフロア、通路の絨毯もふわふわで高級そうに見える。
どう考えても階を間違えているとしか思えない。
「ウサギさん、大丈夫ですか。見つかったら、怒られちゃいますよ?」
声を潜めて聞いたが、ウサギさんはニッコリ笑うだけで、何も返してこない。
ウサギさんは通路奥の部屋の前で足を止めた。カードを差し込み、ロックを外し、扉を開ける。
「どうぞ」
「えっ、なにこれ」