ヒナが俺の誘いに乗ったのには、理由があった。
二軒目のバーで彼女は、とんでもないことを口にした。
「十年前、会おうって言ったのに、待ち合わせ場所に行かなかったのは、私です」
信じられなかったが、彼女からサイトの名前が出てきたので、本人だと認めるしかない。
彼女の話では、当時、自分は高校生ではなく中学生で、嘘がばれるのを恐れて、会いに行けなかったらしい。
まあ、確かに中学生が来たらさすがにビックリはしただろうな。
しかし、十年前、俺が恋していた相手が、中学生だったとは想像もしていなかったよ。
今日ここに来たのも、謝りたかったってことか。
急に自分のことが恥ずかしくなった俺は、どうしたら許してくれるかと聞くヒナに向かって、つい、大人気ないことを口にした。
「もう未成年じゃないんだし、大人の償い方って言ったら分かるよね」