クロワッサンは好きだ。外はサクサク、中はふわふわ、バターをたっぷり練りこんだ生地、ほんと美味しい。
パンくずがお皿に散らばらないよう、食べることは難しいけど。
「宇佐見さん、朝食済ませたんですか?」
「実家で」
そうだった、大阪来たら実家に泊まるって言ってたっけ。私はミルクティーの入ったカップを手にする。
「ヒナは食べずに出てきたんだ」
寝坊したとは言わないでおこう。
「休日は、その、食べないんです」
「ゆっくり寝たいよから?」
「はぁ、まあ、そうですね」
あれ、バレてる?
「この前も大の字になって、爆睡してたもんな」
ぶっ、ミルクティーが口から零れそうになり、紙ナプキンをつかんで口元を拭った。
反論は出来ない。ウサギさんがいつ帰ったのかも知らないのだから。
「一人暮らしだろ。遅刻したことは?」
「ないですよ。平日は早寝を心がけているし、目覚ましだって三つ掛けていますから」
指を三本立て、自慢気に返す私を見て、ウサギさんがクスクス笑う。
「三つは多いだろ」
「そうですか? 普通ですよ」
こうしていると十年前、サイトでやり取りしていたことを思い出すなぁ。
他人が聞いたら、どうでもいいような話ばかりだったけど、すごく楽しくて。
なんかデートしているみたい。デート?